障害年金にもいろいろある

一口に障害年金といっても、中身を細かくみるとかなりの違いがありますので、そこのところをよく承知しておいて下さい。

具体的に言うと、別のページで述べたように、公的年金制度は三制度(共済年金はさらに四制度)に分かれているので、障害年金も三通りまたは六通りある、その制度による違いについてご説明します。

1.各年金制度による給付内容の違い

先ずはその給付(年金制度には、年金の他に一時金もあるので、包括していうときは「給付」と呼びます。)内容の違いについてです。

@ 障害厚生年金(厚生年金保険から支払われる障害年金)

障害等級の1級から3級までの年金と、年金に該当しない3級以下の程度でも障害手当金という一時金があります。

これらの年金は、現役か退職後かとか、収入金額が多いか少いかということには、まったく関係なく支払われます。ただし、老齢(退職)年金か遺族年金を受給する権利(受給権)があるときは、どちらか一つを選ぶ(一人一年金)ことになります。また、障害手当金は、何らかの年金受給権があるときは、まったく支払われません。

A 障害共済年金(各共済組合又は共済事業団から支払われる障害年金)

どの制度の障害共済年金の内容も、共通して障害厚生年金とほぼ同じですが、年金や一時金の支給要件を満たしていても、現役で勤務している間は給付されないというところが大きな違いです。

また、厚生年金保険の「障害手当金」に相当する一時金を、共済年金では「障害一時金」といいます。

B 障害基礎年金(国民年金から支払われる障害年金)

これには、障害等級1級と2級の年金しかありません。つまり、上の二制度に比べて、障害の程度が比較的に軽い人は、年金が出ない場合が多いということです。

この問題については、この後で取り上げていますので、お読みください。

 

2.障害年金はどこで審査されているか

障害年金の審査のやり方は、それぞれの人が加入している年金制度によって違いますが、四つの共済組合ごとにも相違点があるので、以下六つの制度について個別に説明します。

@ 下記の共済組合等以外のサラリーマンの場合

各地の社会保険事務所で受け付けた全国からの障害厚生年金の裁定請求について、社会保険庁長官(実務は「社会保険業務センター」)が集中的に行っています。

A 国家公務員

出先機関も含めて、あらゆる省庁の組合員からの障害共済年金の請求を、国家公務員共済組合連合会(年金部)が一括して審査しています。

B 地方公務員等

国家公務員の場合と違って、個々の組合が直接審査します。組合は、各都道府県、公立学校、都道府県警察、市町村などごとに設置されています。

C 私立学校教職員

日本私立学校振興・共済事業団が、すべての私立学校教職員(加入者)の障害年金を集中的に審査します。

D 農協・漁協、農林中金等の職員

農林漁業団体職員共済組合という単一の組織が、すべての加入者(組合員)の障害年金を審査します。

E サラリーマンでない人(国民年金の第1号、第3号被保険者)

最終的に障害年金の支給・不支給を決定するのは、形式的には社会保険庁長官ですが、実質的な審査は居住地の市町村経由で都道府県知事(実務は社会保険事務所)が行います。

以上の中で、少なくともその制度の請求事案を集中的に審査するケースと、地方ごとの組織で審査するケース(地方公務員共済と国民年金)とがあることがお分かりになると思います。

ここで問題になるのは、地方審査の場合に、地域によって裁定のばらつきが生じる恐れがあることです。(制度間のばらつきも当然あると思われますが、ここでは触れません。)

地方公務員共済については私は不案内ですが、国民年金の場合は、都道府県によってはっきり差異があります。

一般に、西高東低と言われていて、東日本方面の都道府県では審査がからいというのが、厚生行政の一部では公然たる事実とされています。

厚生省でも問題意識はあるようで、担当課長会議等で平準化を図っているようですが、成果が上がっているとは思われません。

しかし、法律で運営されている国民年金制度で、このような不公平があるというのは大きな問題です。憲法(14条)違反の疑いもあります。

また、障害基礎年金に3級がないことから、現実には、障害基礎年金の2級は、障害厚生年金の2級よりもやや甘く査定されるようですが、それでは本当の問題解決になりません。

障害基礎年金について、全国的に公平な審査を行うこと、障害基礎年金にも3級の年金を設けること、これらについて、国民の側から国に要求してゆくことが必要です。