第3号被保険者は保険料を払わなくてもいいからトクか?

 第1号、第2号の人の言い分

第3号被保険者は保険料を払わなくてもよい、とされていることから、実際に保険料を支払っている第1号被保険者の(自営業者や農家の)人たちから不公平だという声が上がっているといいます。

また、独身の第2号被保険者(厚生年金保険や共済組合の組合員)たちからは、どこの誰ともわからない人の奥さんの保険料まで負担させられるのは真っ平、という意見もあるそうです。

では、第3号被保険者というのは、そのようなやっかみを持たれるほど優遇されているのかどうかを見てみましょう。

 被保険者資格の二重性

その前に、加入者(被保険者といいます)になるための手続がどうなっているのかを見ておく必要があります。

国民年金と厚生年金保険では、人が一定の状態になったとき、たとえば、国民年金では日本に住んでいて20歳になったときなど、厚生年金保険でいえば厚生年金保険に加入している事業所に雇い入れられたときなどには、法律上自動的に被保険者になることになっています。

これだけで、たしかに被保険者になったと早合点してはいけません。この上さらに、「(資格取得)届出」ということをしないと、その人は単なる”空っぽの被保険者”でしかありません。この届出をすることによってはじめて、被保険者原簿が作られて、保険料の請求、それの納付、そして一切の事項の原簿への記録、という年金の受給につながる実質が形作られてゆくのです。

このことを私は、ひそかに「被保険者資格の二重性」と名づけているのですが、それでも厚生年金保険の場合(国民年金の第2号被保険者ということになる)は届出手続は事業主がやりますから、従業員は、在職中は親方日の丸状態で済みます。

 第3号被保険者の怖い落とし穴

ここでやっと第3号被保険者のお話をするところまで来ました。

先ず届出についてですが、国民年金(第1号と第3号被保険者)の場合は、届出をするのは、本人(世帯主も届出ができるが)だけですよね。

もし第1号の人が届出を忘れていたときは、いつまでたっても保険料の納付書が送られてきません。だから保険料を支払う意思がある人は、疑問を感じることがあるだろうし、そのことを市町村の担当窓口へ聞きに行くことにもなるでしょう。

ところが第3号の人は、保険料が必要ないことから、届出をしようとしまいと、また忘れていようと、そのことを自覚するきっかけとては、まったくないのです。しかし、保険料が要らないといっても、届出が済んでいてこそ、その届出後の期間は保険料を払ったものとみなされるのです。

この場合、極端な話、最初の届出をしないまま40年間経ってしまったら、年金は1銭も支払われません。夫である第2号被保険者はきちんと保険料を支払っているにもかかわらず、です。

第3号被保険者には、このような恐ろしい落とし穴があるのです。

 保険料方式が租税方式に変わったら

以上述べたところで、もうお分かりかもしれませんが、結論として、私は、第3号がトクとか第1号や第2号がソンなどという問題ではないと考えます。端的に言うならば、それもこれも、現行制度が保険料方式なるが故の矛盾の表れなのです。

もし、国民年金が租税方式であれば、先ず保険料に関する手続などは一切が必要なくなりますし、第1号とか第3号とかの区分も消滅しますから、ソンもトクもいっぺんに雲散霧消します。

しかし、租税方式に換わることについては、なおさまざまな問題を解決しなければなりません。このことについてはページを改めます。