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博物館報 はじめに


当博物館では、過去のプロ野球選手の記録を随時調査している。

記録は、選手やチームの優劣を判定する基礎となるものであり、それだけにその判定精度を上げようとする試みもまた盛んである。これは野球の新しい見方を提供するすばらしいアプローチであるが、どちらかといえば、これまで高低の評価されてきた選手を再評価するために使われることが多いようであり、またその対象も、最近の選手に限られることが多いようである。

新たな記録や指標を使えば、いままで評価の対象にすらされてこなかったような選手を積極的に再評価することもできるはずであるが、これには、現役の選手への親近感からくる興味の差異のほかにも、過去の選手について計算するに必要なデータが不十分であるという状況もあり、必ずしも十分に行われているとは言えないように思われる。

いや、選手の再評価というのは、別に新たな記録や指標に依らなくてもなされることがある。華々しい日本記録やエピソードに彩られた珍記録はよく知られているが、記録の見方を少し変えてみると、そこに、埋もれていた選手がふと浮かび上がる瞬間もある。

今回、博物館報を発行しようと思い立ったのは、記録に埋もれた選手を紹介し、あわせて記録の可能性をまだなおさまざまに紹介できるのではないかという思いからである。それは、選手の再評価というところにまでは決して結びつかないかもしれないが、記録を知ることの楽しさ、まだ残るその可能性というものに気づく契機となるのではないか。そう思っている。

著者の文章力でなかなか伝わらない部分もあるかもしれないが、あるいはエピソード集としてでも、ご覧いただければ幸いである。


written by Seiichi Suzuki, at 2010. 8. 9. / updated at 2010. 8. 9.