私と夏

夏と言うとなぜか蚊帳と蚊取り線香が頭にうかぶ。幼い頃、母がかねの輪っかを部屋の四隅に引っかけて蚊帳を吊ってくれる。世間ではまだ暑さの残る宵の口、ひとたび蚊帳の中にすべりこむと(蚊帳を両手でパタパタやって文字通りすべりこむのである)そこは異次元の世界であった。さあ寝るぞという軽い興奮。そしてそばに蚊取り線香。その匂いは鎮静作用があるのか、汗をかいていても暑さなど感じないで良く眠れるのである。

 昔から日本人は視覚、聴覚、味覚などを駆使して暑さを凌ぐ術を心得ていた。しかし今や冷房をギンギンにいれて、おまけに寒いからと布団をかぶって寝る。言語道断である。

 

July 3, 2001