私とH先生の対論から 平成14年3月 


開業医の大きな柱としての在宅医療をどう育てるか。在宅診療の秘訣、訪問看護やケアマネージャーとどのように連携するか。 

病院も急性期病院と療養型病床群に特化していくなかで、在宅の需要はこれからも減ることはないと思います。

在宅患者は自分の見ている患者が寝たきりになる以外は病院からの紹介患者となります。

これからは病院からの患者をいかにスムーズに在宅にもっていくかを考えるべきです。

地域の基幹病院と医師会との連携を密にして、開業医の情報をもっと病院側に広報するべきでしょう。

病院も受け入れてくれる開業医を探すのに苦労しているはずです。

在宅診療の秘訣というのは、在宅をそんなにたいそうな事と考えないことだとおもいます。

ケアマネージャー、特に福祉系のケアマネージャーさんは孤立していることが多いと思います。こちらから救いの手をさしのべるのを待っているのです。手段はともかく連携は簡単にできるのではないでしょうか。 


24時間連携をどのように工夫し、在宅での看取りの要望に答えるにはどうすればよいか。 

形だけの24時間連携なんてあまり意味がないと思います。医者はポイントポイントさえ押さえればいいのであって、要は患者さんと家族が満足してくれればいいのです。その意味でも医者と患者さんの信頼関係をふだんから築いておくことが大切です。 


介護保険の功罪、入所希望が増えて、在宅は望む人が減った。これを克服するにはどうすればよいか。 

これにはお手上げ。策無しです。県内でも入所待ちの自宅待機の人が大勢います。家族が入所を希望される場合が多く、家族を説得するというのも無理があります。国は特養の個室化とユニット・ケアの方針をうちだしており将来快適な環境の特養がふえるのでしょう。むしろ特養からの視点で特養の実態、メリット・デメリットについてT先生にお聞きしたいと思います。特養の間でもかなり実態に差があるとも聞いています。


4 内科出身の開業医の先生と、外科出身の先生では在宅医療への取り組みにちがいがあるのでしょうか。内科系はだまってみているだけ、外科系はいろいろやってみようかとか。 

よくわかりませんが多少その傾向はあるかもしれません。私もALSで人工呼吸器を装着されているような患者さんなどは少し遠慮したいような気がします。(笑い)


5 訪問看護ステーションとの連携はどうあるべきでしょう。

 M先生のご指摘のように、それぞれの先生方のおかれている環境が異なるので、訪問看護ステーションとの連携もいろいろなケースがあると思います。その意味でU先生がはなされたように地域の医師会レベルでの訪問看護ステーションとの連携や他業種との連携を図る必要があるという意見には同感です。医師会レベルで地ならしていただくと連携がもっとスムーズに運ぶでしょう。


6 ケアマネージャーは、合格者は看護婦さんが多いが、実際に仕事をしているのは、福祉系の人が多いため、ケアプランは、福祉系が優先され、主治医の意向が反映されにくい。また看護婦さんは、福祉系のケアマネージャーに主導権をとられるのをよく思わないようですが。

そういう意見はよく聞きますが、実際は福祉系のケアマネージャーは主治医の敷居が高くて主治医の意向が反映できないということだと思います。看護婦さんは医師の指示で動いているのでケアマネージャーについてあまり関心ないのではないかとも考えます。たしかに訪問看護よりも訪問介護の方が料金が安いのでそちらにはしる傾向があるようです。しかし褥瘡などの処置などは家族以外は医療従事者が行なうことになっていますし、訪問看護の必要性を医師がケアマネージャーにはっきりと話す事が大事です。


8 患者、利用者の抱え込みが目立ってきています。福祉系のケアマネージャーはデイケア、訪問看護などの医療系のサービスを、値段が高いといって、どんどん削っていきます。そして、自分の会社のサービスを入れることばかり考えていて医師の意見を聞く耳を持っていない、または、医師の意見を聞くと自分の思うようにできなくなるから、聞こうとしません。医院も、患者をつなぎとめておくためには、自前のケアマネージャーをおかないと、ますますとられていく。訪問看護も、自前のケアマネージャーを置かないと、知らないうちに削られる。

かなり悲観的な意見とおもいます。私が楽観的過ぎるのかもしれませんが。確かに囲い込みの問題は介護保険の発足当初から危惧されていたことです。しかし医師の意見を聞かないケアマネージャーなんて実際はいないと思います。医師が説明の機会を持たないとかの医師の怠慢ではないのでしょうか。また自前のケアマネージャーなんてとても採算の合うものではありません。


9 ショートステイ、デイサービスなど、一日でも自分が楽できることを考えている家族もいます。

ショートステイは本人のためだけでなく家族の負担を減らすためでもあります。その観点でみると別に問題はないと思います。


10 訪問看護やヘルパーなどに対し挑戦的で、なにか落ち度を見つけてクレームをつけることを考えているような家族もいます。

ヘルパーさんの場合にはたまにありますね。訪問看護に関しては過去に1度、口のききかたでトラブルになった事がありましたが、それ以外のことでクレームをつけるならば医者が家族にはっきり説明すべきでしょう。


11 以上の結果、介護保険が始まって在宅医療はむしろやりにくくなったとの意見もあります。

私は選択の幅が広がってプラスの面が多いと考えています。


12 訪問看護を導入しようと思うと、医師が主導権を持つ必要がある。ケアマネに任すと、知らないうちにヘルパーに代わってしまう。


医師がイニシアチブをとれ、と言う意味は患者については医師が全責任を持てと言う意味でケアマネージャーや訪問看護婦にそれを押し付けるのはかわいそうだということです。福祉系のケアマネージャーは医療の事がよくわからないので、患者の全体像を把握している医師の方が適切なサービスのアドバイスをする必要があると思います。