夕さりに光を集めて 流れゆく紀ノ川のみずは やがて夏色の蜜柑に 吸い込まれ 君の唇に染む 僕も一掬の水となりて 心に染む 漆黒の川面に 影を残して飛ぶほたるは つゆくさの厚さに 負けぬ光を放つ 薄紫の釣り鐘に そっとつつまれた星のかけら 悲しみを吸って 球となった白砂も みずからの重みにたえかねて消える 指先に光る珪素のかけら 人は悲しいほど自分の為だけに生きるものだから もの言う人をあわれと思う 見上げれば 雲の代わりに動く木々