室生寺の四季

・・・・
楓の紅葉ゆ銀杏の黄葉が深山の緑に錦を織り、秋雨に煙る尾根から落ちた葉が谷川を彩る。

・・・・
霜が静かに山に降りる頃、時には淡雪が塔を覆い、朱塗りの柱が白銀に映える。

室生寺縁起

深い山と渓谷に囲まれた室生の地は、太古の火山活動によって形成された室生火山帯の中心部で、こうした幽邃(ゆうすい)な場所は古くから神々の坐ます聖地として仰がれていた。
やがて奈良時代の末期、この聖なる地で皇太子山部親王(後の桓武(かんむ)天皇)のご病気平癒の祈願が興福寺の高僧賢環など5人の高徳な僧によって行われ、これに卓効があったことから、勅使により国家のために創建されたのが室生寺である。
だが建立の実務に当たったのは、賢環の高弟修円であった。
修円最澄空海と並んで当時の仏教界を指導する高名な学僧であつた。
以来室生寺は、山林修行の道場として、また法相・真言・天台など、各宗兼学の寺院として独特仏教文化を形成するとともに、平安前期を中心とした数多くの優れた仏教美術を継承する一方、清冽な渓流は竜神の信仰を生み、雨乞いの祈願も度々行われてきた。
その他厳しく女人を禁制してきた高野山に対し、女人の済度をもはかる真言道場として女性の参詣を許したことから『女人高野』として親しまれている。

・・・・
緑陰は清風を呼んで、天然記念物の暖地性洋歯の生い茂る奥の院への石段には過ぎの大木が鬱蒼と立ち並び、昼なお暗い木陰を冷機がわたる。

五重塔(天平時代・国宝)

■室生寺の魅力は、独特の古い文化遺産もさることなかせら、大自然と調和して四季折々にうつろう伽藍のたたずみの美しさであろう。室生川の清流の奥深く、蓮の蕾にたとえられる円錐形の室生山の麓に開かれたこの寺は、文字通り山紫水明の地に長い歴史を伝えて来た。
室生寺には、四季の移ろいを静かに語りかける文学の世界がある。
一度訪れたら又行きたくなる不思議な魅力を持っている■

・・・・
梅のほころびに始まって山桜の老樹が深い緑の杉や桧を背負いに匂い立つ。新緑が水の流れを優しく包むと河鹿がかすかに若草を震わせ、山にはホトトギスの声が響いて境内いたるところに深山を象徴する石楠花が咲き競う。

室生寺

歴史散歩へ