「芦名一刀流師範 芦名竜氏参る!」

 と叫び、景虎の左側から襲いかかります。今までの動作からは、想像できない速さです。

 一瞬の間があって、たくさんの白いたすきが北風にのって流されていきます。果し合いに似合わない

美しい光景でした。

「仕込み杖か・・・」

 左手に残った包帯の残骸を取り除き、短刀を取り出す景虎。

「ふん、短刀を持っていたか。だがそんな短い得物で、どうするつもりだ。」

 ジリジリと左側に回りながら、攻撃の機会をうかがう竜氏。対する景虎は右手に短刀を持ち微動だに

しません。そして竜氏は景虎の左斜め後方から走り込んで来ました。

 冷たい氷の刃が景虎に襲いかかります。さっきは解らなかった、刃の放つ紫電がはっきり

見えました。杖に刀が仕込まれていたのです。

 刃が間近に迫ったとき、景虎が動きました。刹那の後、紫の流星が回転しながら空き地の外れに

落ち、それと同時に竜氏が倒れます。 一体何が起こったのでしょうか?

 

 

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