「・・・そうこなくちゃな、甲州流道場師範代 山県昌虎、参る!」

 大声で名乗り、左腰の大太刀を抜いて上段に構えます。

「上杉流兵々法 長尾景虎」

 こちらは静かに名乗り、右腰の現代備前物の大刀を左手で抜き、中段に構えます。

「その刀、刃がないではないか。儂を馬鹿にするのか」

「刃がないからこそ、手加減無く振るうことが出来る」

「なるほど、ならば行くぞ!」

 巨体に似合わぬ俊敏さで、切り込んできました。それを真正面から受けるジュン。

 体格の差でジュンがはじき飛ばされるかと思いましたが、しっかりと受け止めました。火花が

散って、刀と刀が重なり、鍔迫合いの状態になります。

 力比べとなれば、山県の方が有利のようで徐々にジュンが押されていきます。だけど、ジュンは

大刀を左に流し体勢も右足を軸に左に回転して、山県の大太刀を左に流すことに成功します。

 そのあと素早く飛び退き、再び中段に構えます。山県は再び上段に構え、飛び込む機会をうかがい

ます。  

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