[神饌]

神社や神に供える供物を神饌、寺院や仏に供えるのを仏供(ぶっく)と云いますが、神仏への饗宴の食事という意味があると思われます。神饌には生き物が多く使われ、仏供には生き物は使われないのが一般的なようです。共通して山海の獲物、田畑の産物を供えられますが、神様仏様へのおもてなしとして珍しい形式の神饌や仏供も見られます。それぞれの地域産業や祭祀儀礼の意義などいろんな要素が重なって伝承されているように思われます。特殊神饌と称されるものや珍しいと思われる神饌、仏供を取り上げてみました。


[和稲(にぎしね)_嘉吉祭_談山神社]
百味の御食の神饌はその名のとおり、昔は200種ぐらいあったとか。今では35種ぐらいでしょうか。それぞれに特徴がありますが、特に目をひくこの神饌は「和稲(にぎしね)」と言い、米粒を赤、青、黄の食用紅で染め、一周42粒70段に仕上げてあります。上部には五色に染めた家の垂木を表す長方形の餅が数本つけられており、上方に反っているのは家の繁栄を願ったものものだという。
(2008.10.14)(桜井市)


[熟饌_三枝祭_率川神社]
(2008.6.17)(奈良市)


[七色の御供_シンカン祭り_倭恩知神社]
(2008.9.5)(天理市)


[餅_桃香野八幡神社]
(2008.10.19)(奈良市月ヶ瀬)


[百味の御食_三柱神社宮講_膳夫]
(2008.10.28)(橿原市)


[鉢巻飯_亥の子暴れまつり_高田]
(2008.12.7)(桜井市)


[三宝盛り_申祭り_山添春日神社]
神に供える神饌には、種類、作りも多種多様でそれぞれに特徴もあり興味深いものがあります。その作りに凝ったものもあり、芸術品的なものもあります。材料はめでたいとされる山海の恵みなどが多いようです。ここ春日神社の神饌もいろいろありますが、中でもこの神饌は素朴なものではありますが、私個人的には「これはいいなあ」と感嘆。材料は小餅、葉つきの柚、葉つきのコウジ、柿といずれも地元のもので簡単ながら豪快な盛り。コウジはミカンと同種ですが、酸味があり、紀和山地に多いそうです。柿は「鶴の子」という種類で、地元では「ころ柿」という干し柿にされるもの。
(2008.12.10)(山添村)


[人形(ひとがた)御供_蛇祭_倭文神社]
(2008.10.13)(奈良市)


[ブリの頭_弓打ち_秋留八幡宮]
(2008.1.16)(三郷町)


[アカガエル_国栖奏_浄見原神社]
吉野川上流の崖淵に鎮座する浄見原(きよみはら)神社で古式ゆかしく行われる国栖奏(くずそう)。右手に鈴、左手に榊を持った舞翁が朗々とした歌翁の謡や「エンエー」(延栄の意とか)の声にあわせて古式ゆかしく舞います。応神天皇が吉野を訪れたときに国栖(くず)地方の人が一夜酒を作り歌い踊ったという故事にちなんだ伝統行事で古代をよみがえらすような素朴な舞。神饌に腹赤の魚(うぐい)やアカガエルが生きたまま供えられていました。古代のご馳走だったとか。(2008.2.20)(吉野町)


[懸鳥_大宿所祭_おん祭]
春日若宮のおん祭に供えられる供物。これらを懸鳥(かけどり)というそうです。祭の大役である大和士(やまとざむらい)の参籠所「大宿所」に供えられています。大和のわらべ歌にも♪尾のある鳥と尾のないとりと〜♪と唄われています。昔はキジや鯛などとともに、ウサギや狸(尾のない鳥)、なども供えられていたそうです。今時のことで、四つ足動物は遠慮されているのでしょう。
(2007.12.15)(奈良市)


[氷柱_献氷祭_氷室神社]
古代には朝廷に氷を献上する制度があったそうです。元明天皇の時代(710年)に吉城川の清流で作った氷を氷室に保存し、平城京へ献上され。献氷祭が行われたいわれがあります。その後衰退していたが、昭和35年から全国の製氷業者が集まり献氷祭が行われています。海の幸、川の幸として鯛、鯉を氷にとじこめた氷柱を供えられます。
(2005.5.1)(奈良市)



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