木賊山
江戸時代の記録には「木賊刈山」とも記される山です。その名が示すように御神体が右手に鎌、左手に木賊の束を握っており、欄縁の上部にも御神体を囲むように木賊が配されています。角房掛金具は兎を、欄縁金具は蝙蝠をそれぞれあしらった優れた構図のものです。前掛、胴掛、見送はどれも彩り豊かな逸品で、それら装飾品と御神体の悲しげな表情の対比が見所です。

世阿弥作の謡曲『木賊』から着想された山。
生き別れた父を探す松若は、故郷信濃国園原で木賊(砥草。物を磨くのに用いられる植物)を刈る老人の家に泊まる。老人は、別れた子に巡り会うがために旅舎を作り旅人を泊めていると語り、松若に酒を勧めながら我が子の好きであった小謡曲舞を、子を偲びつつ舞う。実は老人は松若の父であった。御神体は、子を思い1人寂しく木賊を刈る老人の悲しみを深く表現した名作で、桃山時代に作られたといわれている。

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