[BRM]

DIPS と FIP に対する当館のスタンス


3.12 はどこから来たのか -整理、混同-」「3.12 はどこから来たのか -由来、根拠、検証-」において、 DIPS と FIP についての諸相を述べてきたのだが、ここで当館における、表記や記録提供におけるスタンスをまとめておきたい。

現在は混同されている DIPS と FIP であるが、徐々に混同が解消され、将来的にはそれぞれ異なるものであるという認識と、 FIP について(特にその定数について)の正しい認識とが定着していく、現状はその過渡期に当たる。上の稿で述べた趣旨から言えば、現状をこういう形に定義されることになるだろう。

以上を踏まえ、当サイトでは用語を以下のように定義したい。

DIPS

いくつかの定義が考えられる。

  1. Voros McCracken が提唱した計算方法に基づいて算出された、守備の影響力を取り除いた投手成績値のうち、防御率(いわゆるdipsERA)
  2. Voros McCracken が提唱した計算方法に基づいて算出された、守備の影響力を取り除いた投手成績値全般
  3. Voros McCracken が提唱した、守備の影響力を取り除いた純粋に投手の能力を指す値で投手を評価する、という概念

後の候補になるほど広い意味を持つことになる。例えば 3. の意味で使うのであれば、「FIP は DIPS の一種である」といっても差し支えなくなる。しかしこれは混乱を招くことになると思われるため、主に 2. の意味で定義することとし、 1. のように厳密に dipsERA について述べたい場合は dipsERA と明記することとする。

dipsERA についても、「dipsERA」「DIPSera」「DIPS ERA」などさまざまな表記方法があり、海外でも特に統一されていないのが現状である。当サイトでは「(守備の影響力を取り除いた)防御率」という視点から「dipsERA」という表記に統一したい。

一方 DIPS 2.0 については、ほぼ 1. の意味で算出された値のバージョン 2.0 として捉えられることが多いため、改めて定義する必要はないだろう。

FIP

Tom Tango が提唱した、守備力に影響されない投手成績を元に算出された、投手本来の実力に基づく防御率を指すものとする。そしてその計算方法は、以下のとおりである。

FIP = { ( 与四球 − 故意四球 + 与死球) × 3 + 被本塁打 × 13 − 奪三振 × 2 } ÷ 投球回数 + 定数

定数には、年度・リーグごとに算出された、平均防御率と平均FIPの差を値として用いる。

これが一番厳密で正確な定義となるだろう。しかし、定数の算出にはさまざまな補正が行われることが考えられる。したがって、 FIP の値を提供する際には、定数の算出方法についてもなるべく詳細に述べ添えることが望ましく、また述べ添えられていない場合は、上に述べた平均防御率と平均FIPの差が用いられていると見なされるように、値を提供する側が留意すべきであろう。

FIP(c=3.12) もしくは FIP(3.12)

日本において FIP が DIPS として導入されて以来、定数には 3.12 が用いられることが多い。定数を 3.12 とした FIP は計算が簡単で、またある程度馴染みもあるため、今後もしばらく用いられる可能性は高い。そこで、定数を 3.12 に固定して計算した FIP を特に FIP(c=3.12) と表記する。

c は定数 Constant の頭文字である。カッコ内に定数が入るという認識が定着するならば、 c= を省略し単に FIP(3.12) と表記することも可能になるだろう。また、定数は何も 3.12 に限らず、3.2 を使えば FIP(c=3.2) (もしくは FIP(3.20) 等)と表記できる。一定の定数によって計算されている場合には分かりやすい表記法となろう。

他にも FIP 3.12 や FIP+3.12 といった表記も考えられたが、前者は FIP 自身にバージョンが設けられた場合に紛らわしく、後者は FIP の値に 3.12 を足した、という意味に取ることができてしまい、また紛らわしい。

当サイトにおける表記は、以後上のようにしていきたい。

現在、当館内において DIPS あるいは FIP を使用している箇所は、博物館報以外にはない。そこで、既に博物館報で FIP に触れた部分については、下記のスタンスで修正したい。

R02 日本のDIPS更新史

上の定義に基づくならば、タイトルは「日本のFIP(c=3.12)更新史」となるのが正しい。文章中の「DIPS」という文言についても、すべて FIP(c=3.12) に置き換えられることになる。

文章中の文言については、すべて DEL タグを用いて修正することするが、タイトルについては、発表時になお筆者も混同していたことの証として、当時のまま残しておく。その上で、稿の冒頭に修正に関するコメントを含めることとする。

D02 DIPSシーズン記録一覧

「R02 日本のDIPS更新史」と同様の方針である。

R02a リリーフ投手のDIPS

「R02 日本のDIPS更新史」と同様の方針である。

R02b その後のDIPS

「R02 日本のDIPS更新史」と同様の方針である。

C03 日本のWHIP

文章中に「DIPS」という文言が出てくるため、その部分については「R02 日本のDIPS更新史」と同様の方法で修正する。


written by Seiichi Suzuki, at 2010.11.25. / updated at 2011. 3.13.